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雑記

「今、ここ」

11/18, 73日目

Mount Maunganuiを離れ1週間が経過した。現在は東側の港町、Napierに滞在している。ここはアールデコ建築で有名な町で、1931年の大震災後、当時の流行であったアールデコ様式で町全体が再建されたという歴史を持つ。何気ないお店まで外観が調和された雰囲気を持っており、歩いているだけで楽しい。

ネイピアのK

他の人と話していると、あまり地震のイメージが無いような印象を持つニュージーランドだが、実際には地震が多い国である。特に南島の方が地震が多く、クライストチャーチでは2011年に死者150人を超える地震が発生している。

図書館に併設された美術館兼博物館では、地震に関する展示も行われており、当時の様子や地震のメカニズム、過去の被害状況などを学ぶことができる。特に、初見で足を踏み入れた実際に床が揺れる家屋の展示は印象的だった。ニュージーランドは太平洋プレートとオーストラリアプレートの境界に位置しており、これらのプレートの動きによって地震が発生しやすいのが事実である。

ロトルアでの滞在と同様、最初の数日はホステルをホッピングしながら、ランニングと併せて町を散策した。小さいながら、スーパーやホームセンターも充実しており、観光地としてだけでなく、生活の上での雰囲気も良い。港町生まれの血なのか、相変わらず海の見える町が気に入ってしまう。釧路、ケープタウン、紋別...札幌も東京も石狩湾や東京湾を考慮すれば、海に近い町だ。標茶が唯一の内陸だったが、シラルトロや塘路湖によく行っていたことを考えると、水辺は欠かせない要素らしい。

中期滞在するホステルも確定させ、ここでは鹿牧場、食肉加工大手の工場、日系のハウス型ストロベリー栽培企業などの調査・訪問を行いながら、日本のプロジェクトを進めている。また、何よりワイナリーの町でもあるのでニュージーランド最古のミッションエステートワイナリーのほか、カツオドリの営巣地探索も目的である。

前回の記録から少し時間が経ってしまったが、ハーフマラソンは2時間切りは問題なく達成し、トレイルランのようなコースで体力的にも余裕のある走りができたことは自信に繋がった。まだ、ウルトラトレイルの壁は高く感じるが、30代になっても身体は問題なく進化できるようだ。昨日は、身につけているスマートウォッチが夜の落ち着いた時間に脈拍数の低下アラートを発して驚いたが、調べると心機能が強化されて平穏時の脈拍数が下がってきているらしい。たった3年、それほど真面目にトレーニングしていないのにこの成果なら、万人におすすめできる趣味のような気がする。

根室マラソンのリベンジ完了

Taraweraは今回の滞在中は流石に挑戦が難しそうだが、いつかmacpacかkathmanduのウルトラトレイル用ザックを背負って挑戦してみたい。鹿追に再挑戦しながら、ロトルアの町を再び拠点にする日が楽しみである。

新しい町での滞在が始まったものの、Mount Maunganuiで出会った445 RUN CLUBはここNapierでも活動があり、規模は小さいものの良いつながりができた。孤独に見えるランニングだが、こうした出会いも生み出してくれるのは嬉しい。一方で、ホッピングしていたホステルの1つでノミの酷い襲撃に遭い、数日間痒みに悩まされたのは苦い思い出だ。前後して、心身が絶好調ではない時間もあり、内省の時間が訪れた。

滞在しているホステルの屋上には、なぜかカエルが蓮華座を組んでいる銅像がある。兼ねてより興味のあった瞑想だが、今年の1月頃に『「何もしない」をする』という経験を、尊敬する経営者の方の勧めで行ったこともあり、これも何かのきっかけかと思い、ここ数日は改めて本を読んだり、実践を試みている。

意外と軽い

幼少期にはあったような「物事がクリアに見える感覚」がいつの間にか薄れていたことを、視力の低下が一因かと思いつつ小学生の半ば頃から感じていたが、Meditationではそれを取り戻せるような兆しを感じ始めている。「マインドフルネス」という言葉が人口に膾炙してから久しく、相変わらず胡散臭いと思っているのが正直なところであるものの、語源を辿れば「気を配ること」という本質に改めて気づく。

雑念を捨てて無になる、というようなイメージを持っていた瞑想も、実際には「今、ここ」に意識を集中させる行為であり、過去や未来に囚われず、現在の自分の感覚や思考、感情に注意を向けることが重要であるらしい。始めたばかりは霧の中だったランニングも、今では大切な時間になっていることもあるので、スプリチュアル的な意味ではなく、自分の認識がどう変わるのか期待も込めて続けたいと思う。

振り返れば、東京から北海道に戻ってきたこの数年は、レールどころか地面もない海に飛び出したようなものだが、酪農を始め北海道の産業と地域の深い理解を得られたことと、自分の弱さを知ったこと、一方で身体的な強さを手に入れたこと。読みたかった本をたくさん読めていること。4年間の教養学部に通っているようなものだと考えたら、この上ない贅沢な学びの時間なのかもしれない。

"Haste not, Rest not" いつか見たあの言葉を思い出しながら、今日も「今、ここ」に幸せを感じて生きている。