02/03, 151日目
ふと見つけた小学3年生の自分。夏休みの自由研究と書かれた黒板の前で、笑顔で抱えているのは「山の虫 植物」という自作冊子だ。
現物が家にあるかは定かでない。中に何が書いてあるかも記憶の彼方だ。表紙には、トンボや魚、川辺を沿うように森が描かれている。
南島、クライストチャーチ近郊の山の中で暮らし始めてしばらくが経つ。相変わらず電波は貧弱だが、テキストベースで帯域を要しないLLMに思索を深める上で大いに助けられている。
鹿牧場の柵やShedのメンテナンスをしながら、オーナーの意向で植林活動も進めている。バックグラウンドに物理学の博士号というユニークなオーナーで、再生エネルギーの研究をしながら、理論に留まらずこうして持続可能な自然環境を生み育てる活動とその志に大いに感銘を受けている。
以前の記事でもKaitiakitangaには触れたが、ここでの暮らしを通じて改めてその意味を理解する。経済合理性による植林ではなく、原生植物をマオリの知恵を借りながら同定し、然るべき姿で未来への苗を植える。一見複雑で多様な品種も、一つの生態系としてみたときに驚くような調和をもって、持続可能なバランスを取っていることに感動する。
Agroforestryなる言葉も、ここで初めて知った。今ではRegenerative Agricultureは珍しいキーワードでは無くなりつつあるが、家畜との暮らしと並行して、森林再生を進めることは、より大きなインパクトを環境に与えることができる。横展開のできる鹿牧場を北海道全体に広げる、その視野の狭さと自分のアイデアが恥ずかしく思える。「大地が万巻の書より多くを教え」てくれ、「自然という大きな書物の中にリテラシーを見出し」、「自然は常に真実」なのだと、遠くの山々を見つめて思う。
マオリの自然に対する畏敬は、アイヌと驚くほど似ている。カムイに対応するAtua、面白いのはPepehaという自己紹介の形式で、自分のルーツをとても大切にし、それらがAtuaにつながる点だ。つまり、根源には自然がある。Maunga(山)、Awa/Moana(川・海)、Waka(カヌー)、Iwi(部族)、そして自分の名前。祖先というルーツのさらに先にAtuaがある。Six60の"Don't Forget Your Roots"と"Pepeha"が、一層の深みを持って胸に響く。
高校3年生の交通事故以降の自分は、考え方も頭の回転も別のものになったと思いこんでいた所もあったが、興味のルーツは変わっていないのだと、どこか安心する。自然とテクノロジー、その調和。それらを教育そのものと統合して、未来を大切にできる人と社会につなげていくこと。南アフリカ、日本と北海道、ニュージーランド、それぞれに根を張って、見えてきた世界がある。
なんだかこの顔の向く先に歩いてきてよかったなと、ふと感じる。窓の外では大好きなFantailがあの可愛いさえずりをしながら尾を振っている。好奇心の交差点で、今日も世界はとても美しく見えている。